中小の製造業者がひしめく長野県諏訪地方。
大手メーカーからの発注が細り、現在は不況の真っ直中にある。
この苦境を打開しようと、若手経営者たちが立ち上がった。
地元企業をネットワークし、バーチャルな工業団地をつくろうというのだ。
地図には載らない大規模な工業団地
(中略)
そんな暗い状況を吹き飛ばし、地域の活性化をはかろうと、約100社が参加する新しい工業団地が立ち上げられた。といえば、きれいに区画された広大な敷地を思い浮かべるが、地図を探してもこの工業団地は見当たらない。実は、コンピュータ・ネットワーク上に設けられた仮想工業団地なのだ。
(中略)
ホームページ上で参加メンバーの情報を公開するとともに、メーリングリスト(電子メールを利用して参加者が情報を共有できる仕組み)を使って情報を交換。従来ならば「向こう三件両隣」のレベルだった交流を格段に広げ、メンバーどうしで新しい仕事の輪を広げると同時に、S-VIPとして仕事を受注しようというわけだ。
CATV会社の高速回線がプロジェクトをサポート
(中略)
ネットワークの花形は情報のオープン化から
(中略)
複数の企業をネットワークで結び、あたかもひとつの工業団地、いや、ひとつの会社のようにまとまって、外部の企業と接するのがバーチャル工業団地のひとつの理想のはずだ。また内部で新しい関係を築く場合にも、情報の共有化は欠かせない。
(中略)
情報をオープン化する土壌ができつつあることは、S-VIPがようやくスタートラインに立ったことを意味するのだ。
(中略)
参加メンバーがいかに技術力と強固なアイデンティティを持っているか--。S-VIPの成否は、まさにそこにかかっているといっても過言ではない。
ネットワークを通じて潜在需要を開拓する
(中略)
人との交流が新しいアイデアを生む
(中略)
「旧来のリソース(資源)の上に、新しい資産を加えて会社をつくり直す、第二の創業をしなければならないと思います。そして、製造業の火を消さない努力をしなければ。
人間がサルから進化できたのは、モノをつくったからでしょう。その意味でいえば、これは人間への回帰運動ともいえますね」
今後S-VIPの取り組みが本格化すれば、第二の創業を経た新たな”スーパー中小企業”の登場を促すことになるだろう。そしてそれは、S-VIPの目標である「日本の製造業のひとつのモデル」へ向けた大きな一歩となるに違いない。(本誌・大森 隆)
|