■ 本文より抜粋 |
長野県岡谷市にある工作機械販売会社の大橋俊夫専務(42)は現在、地元で「インダストリーウェブ研究会」や「諏訪バーチャル工業団地」など、日本の中小製造業の再発進に向けたネットワークづくりの中心として活躍し、大手メーカーや大学研究者からも注目
されている。その新たな動きの出発点が根津氏の講演を聞いたことだった。(1994年6月)
講演を聞いた大橋専務は「東洋のスイス」の繁栄を復活させたいと願い、インターネットやEメールの導入を始めたが、そこでまず「インターネットの中には製造業の情報がない」という現実に気がついた。なければ自分たちで作り出そう。地元の経営者仲間と協力して4年前に「インダストリーウェブ」と「諏訪バーチャル工業団地」の2つのホームページを開設した。各企業をホームページで紹介し、取り扱い機器や部品を直接、受注できるシステムは日本ではまだ珍しかった。
「これで世界から注文がくるぞ」と大橋専務は自信満々だったが、その自信はすぐにしぼんだ。思うようにインターネットは仕事に結び付かない。
情報が流れるだけではネットワークにならない。ホームページは参加企業の情報共有の場へと変わっていった。「各企業のアイデア、協力できる仕事、交換可能なノウハウなどを共有し、お互いに業績を伸ばしていけば、各企業の知識や情報力が高まり、いいものを作れるようになる。作り手と使い手が密着して本当に欲しいもの、高品質なものを作り出せるようにするのがネットワークなんです。」
諏訪バーチャル工業団地には現在、地元企業など120社が参加し、情報の共有やネット利用による部品調達は全国に広がっている。
岡谷市内では先月4,5の両日「e-ものづくり2000@岡谷」というイベントが開かれ大手メーカーの役員や在日イスラエル大使館の経済公使も会場に姿をみせた。
イスラエルはハイテク産業に力を入れ「小シリコンバレーづくり」を目指している国である。
(中略)
大橋専務らの活動について、京大大学院経済学研究科の出口弘助教授(経済システム新化論)は「日本では、高度に集積している中小企業が製造のハブ(拠点)としてオンラインのものづくりの新しいビジネスモデルを構築する可能性があると思う」と語り、中小企業が持つ潜在能力に期待をかける。また、講演で大橋専務に影響を与えた根津氏は「Eコマース時代を迎えた現在、コンピューター画面上でものづくりを行う技術は実用化され、急速しつつある。「諏訪バーチャル工業団地」のめざす方向は大いに期待できる」と話している。
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