町工場からの通信・バックナンバー

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1998.3.30.

■中学生とナイフ 〜 製図の話−1■

「ほんとにもう、変な図面書いて、作る者は大変なんじゃけん線引くのは、
簡単じゃけど、自分で作ってみい、、」と職人さんが言うのをよく聞きますが。
私はこういう議論に、耳を傾けません。

 平行度が100分の2ミリの平行線を引くより、加工する方が簡単だからです。
また出来上がる迄どんな格好をしているのか、見当もつかない複雑な形状は
加工しているうちに、分かってきます。それを他人に伝わるように
紙に書けといわれても逃げ出したくなるからです。

 確かに寸法や公差をちょっと書き換えるだけで、値札に0を加えたり消したりする程の
工数の変化は、珍しくないので、恨めしく思うこともあります。

 それでも私は図面を引く人を、大変尊敬しています。それには、大変深くて暗い訳があります。
私が製図下手の製図嫌いだからです。CADは私にとって救世主です。
パソコンなしでやりたくないこと、ベスト3は、製図、集計表の縦横の計算合わせ、
年賀状の宛名書きです。

 日本男子が、初めて技術に触れる中学一年生の時、工作から背伸びをするときに、
わくわくしながら ものづくりに期待が高まってるときに、1角法3角法の
座学(確かに物づくりは、投影法とsin.cosの2つの三角法が分からないと1歩も
前に進めません)よっしゃーいよいよ工作室で、と思ったら、製図板とT定規。
なかなか物づくりにたどり着けないのです。
だけどここで、刃物との出会いがあります。鉛筆の芯をくさび型に研がないといけないのです。
これは鉛筆削りではできないのです。

 ナイフを知らない子供たちの私は、なれない鉛筆削りと格闘する事になります。
ナイフで削るのも円錐なら簡単だけど、芯の部分がくさび型のブランクとして
円筒形でなくてはいけません、被削材の軟らかい方に曲がる切削に道理に抗して
(ああ、芯の方が硬い電線の被覆はぎは、なんと楽なことか)短くなるまで、
何度も削りました。
 次の難関は、くさび型です、ナイフを知らない子供たちは「くさび」そのものを知りません。
象形文字の進化した物程度の認識で、くさびの人類に果たした役割を知るのはずっと後でした。
くさびを知らない私たちも、線を引くためと用途は理解しています、
ここで中学生は矛盾に突き当たります、くさびは誰がなんと言ってもテーパです、
そうすると、ちびると線が太くなることは、頭のディスクの回転が遅い私にも分かりました。
教科書を無視して、限りなくパラレルに近い形状に研磨します。
(テーパの方が強いことに気がつくのは成人してからですから、
ペラペラの芯を折っては作り直すことを繰り返します)

確か課題はVブロックだったように思います、鉄工所の倅が何に使うか分からなかったので、
他の生徒も分からなかったと思います。訳の分からぬ物の製図に胸を踊らすはずもなく、
ひたすら道具づくりに励み、授業の大半を木くずと黒鉛の粉の生産に費やしました。

 そういえば、学校でナイフの正しい使い方は習ってないな------
 でもドライバーを渡すときにでも、刃と言う物は他人の方に絶対向けないことはたたき込まれました

                              つづく


1997.12.25.

■町工場の経済学 その2〜ラララ-作ってはいけないもの■

 近所にある山陽鉄工株式会社のホームページには、お札の紙を作る機械が載っています。
大蔵省だから加工費をうんと、はずんでくれたでしょう。と社長に聞いたことがあります。
某重工からの仕事なのでそうでもなかったようです。
売らずにお札作ったら良かったのにと、冗談を言ったら笑ってました。

 男はつらいよで額の汗をぬぐいながら資金繰りに悩む印刷屋のタコ社長に、
娘のあけみ(だったと思う)が1万円札ジャンジャンすればいいじゃん、と言って、
こっぴどくタコ社長に叱られるシーンがあります。
私も同じことを印刷会社の営業の方に言って、ずいぶん叱られたことがあります。
このことについては、印刷会社の方は冗談をも許さない厳しい倫理観を持ってます。

 お金は、神のみが作るもの、もしくは国民の信託を受け理性と知性を持って
神の代行を司る国家のみが作るのです。偽物を作るなんてもってのほかです。
狐と狸が木の葉で作る以外は何人も作ってはいけないのです。

 ところが最近は、24時間稼働のお金を吐き出す機械があるそうです。
使ったことはないのですが、レギュラーコーヒーの自動販売機のようにその場で作るのではなく、
あるものを仕込んでおく自販機に近いので、作ると言ったら語弊があるかもしれません。
コインの代わりに自分の将来を入れるとお金が出てくるのです。
 本当に困った訳有りのお金も、周りの人に相談できない貸してもくれないほど世間が世知辛くなり、
消費ばかりあおられ踊らされたりで、結構繁盛しているようです。
 かつて、町工場は給料が安く前借りをする人が時々いました。
前借りしなくてもやっていける様にと、町工場の経営者たちが努力した結果、
大企業との賃金格差も縮まり、前借りをする人はほとんどいなくなりました。
しかし、前借りによって社員の家庭の経済状態がいい意味でわかり、
賃金の見直しや、福利厚生や融通する事も出来ました。

 苦労して物を産み出す職人は、お金と労働の価値を知り尽くしているので
安易なキャッシングに走らないともいますが、自己破産者の急増で自粛していたCMが
年末にかけて派手になっているのを見ていると不安を感じるこの頃です。


1997.12.16.

■町工場の経済学 その1〜援助交際とバブル■

 ケインズはおろか、「ナニワ金融道」の第1巻さえも
未読の鉄工所のおじさんが、経済学を展開してみます。

 12月の季節行事として、銀行強盗騒ぎが起きる。
映画のように大銀行をハンサムな悪者がマシンガンをもって襲う様なかっこいい奴ではなく、
たいてい犯人は、取引先にきちんとお金を払う為、社員にボーナスを払うために
零細企業の親父がせっぱ詰まって起こす強盗未遂である。
違法行為ではあるが、公的資金が導入されるわけでもなく、自分なりにそのときは、
人様にめいわくをかけない為にとった選択なのでしょう。

 バブルとバブルの破綻による住専の破綻、金融業界の倒産、上場企業の総会屋汚染、
この方たちはどういう責任の取り方をするのでしょうか。
(アメリカの貯蓄信用組合の破綻の時、土地転がし・不良債権の飛ばし・
  付け替えなどをやった人4500人が懲役刑になっている)

 援助交際とバブルは共通項が多いと思います。

1.本来、売ったり買ったりしてはいけないものを、売り手も買い手もマスコミも
 一緒になって有りもしない値段を付けて喜んでいる。

2.楽して(狡して)儲けるのが賢者であり、額に汗して働くことを馬鹿にする風潮を生み出す。

3.売り買いする時期によって、値段が違う。(女子高生は売り時に敏感?)
 
 売り買い出来るものは、社会から委託されて生産した物(ハンマーを使って作った
ハードだったり、マウスを使って作ったソフトだったり、便利な輸送だったり)であり。
 地球を小分けしたものや、命を産み出す性、金の成る木という阿片、
総会屋などの裏社会の暴力が、値札を付けショーウインドウに並んではいけないと思うのです。
  
 消費者主権は大事なことで、生産者が消費者より威張ってはいけないと思いますが、
本来の人間の生活の特徴である「つくる」より「売り買い」ばかりが強調され、
倫理観を見失っているのではないでしょうか。

  ぶどうから ぶどう酒をつくり
  石炭から 火をつくり
  接吻から 人間をつくる
  それが 人間のあたたかな掟
         ------ポールエリュアール


1997.10.20.

 ■技能 1/100ミリの戦い その2〜職人論■

 KAIZENは立派な国際語になってますが、SYOKUNINはどうでしょうか、
技能五輪で日本がガンガン活躍して、KAMIKAZEやSAMURAIよりも
日本にはSYOKUNINがいるから恐れられるようになったら、気持ちいいとおもいます。

 「タカスギー、タカスギー」ある女性が、職人の話題になったら突然叫びました。
今は立派なおばさんになっていると思うけど、女性が連想すると森林でターザンまがいの
技を使う職人まで飛躍するのかと驚きました。
強烈に職人をアピールしたこの会社の今の社名とCMは、
なぜか職人の技をみじんも感じさせません。
職人は時代遅れでしょうか。

 私は自分のことを、職人と呼びません。工員と呼びます。
ブティック「職人の店」はよく利用しますが、職人と言うには仕事の技も
酒も強くないや、というイメージがあるからです。

 工員と呼ぶのは、採用難を話し合っていて、

「鉄工所の社員が新聞に載ると "会社員" ではなくて "工員" で出る、
              マスコミもけしからん、会社員扱いしとらん」

という話題になってからです。

もっとも、悪いことして新聞にでるのは行員の方が目に付きますが。
小さくても3Kでも会社と抗議を込めて敢えて工員と言ってるわけです。
職人の持っている神秘的な輝きもなければ、フェミニスト風に言えば、
家父長的な頑固さも感じさせない言葉の身軽さは気にいってます。

 「これはもう職人の世界だ」とかよく使う割には、ニュアンスは人それぞれのようです。
それだけ便利な言葉かもしれませんが、職人の概念を戦わせる「職人論論争」なんて
あっていいのかもしれません。


1997.10.13.

■1/100ミリの戦い その1〜はじめに■

 1ヶ月以上前になりますが
今日のコラム・バックナンバー(1997年9月8日分)金属機械加工業界の情報 by (株)ヤマトプロセシング 鈴木貞良で既報の
NHKスペシャル「1/1000ミリの戦い・技能五輪・技術立国再建への挑戦」の話題を、
今更ですが取り上げます。しかも連載で。
田舎の鍛冶屋へは情報が届くのが遅いと、笑って読んで下さい。

 尚このコラムのタイトルが 1/100ミリ となってますが、
町工場の技能に嘘があってはいけないので、筆者のレベルにダウン(UP?)サイジングしてます。

 技能五輪国際大会概要は、番組のヒーローを生み出したデンソーの中にあります。
ホームページをご覧になればわかると思いますが、ハイテクとともに
技能を大切にしてる企業です。番組内でかつての金メダリストが技術系を離れ、
自社製パソコンの前で別の業務をしていた某社とは対照的でした。
(この会社は女子社員が輸入したパーツを組み立てている風景が映っていました。)

 技能検定も3級を新たに導入してますが、不人気な様です。
鉄工所の経営について書かれた本は3冊ほどしかないと思いますが、
どの本か忘れましたが、技能士の資格はあった方がいいが、あまり役に立たない
という様なことが書かれていたように思います。
 実際、近くの、一級技能士兄弟が経営している工場が続かなくなりたたんでしまいました。
技能者が社会的にも経済的にも認められる仕組みが必要ではないのでしょうか。

 技能が文化だとすれば、目先の市場原理だけにとらわれていたら滅びてしまう
他の文化と同じです。再販制度が規制緩和のまな板に上げられていますが、
クラシックの演奏家の技能は市場を通る工賃でしか守られなくなってしまうかもしれません。
 私たちは、経営と技能を結合させる中で両方を守っていかなければいけないでしょう。
デジタルカメラでベテラン社員の技能のデータベースを作り始めている鉄工所もあります。
経営的にも大きく成功しているデンソーの金メダルから町工場が学ぶことは多いように思います。

#なお、「世界一の製品は世界一の技から生まれる」デンソーについては
#石田正治さんが「あいち産業情報」の9月号に
#「世界一の技 田上俊一さん・塩崎秀正さん」として書かれてます。


1997.9.24.

■零細企業における情報化 その2〜見栄えプロセッサー■

 以前、機械装置の加工・組立を請け負ったことがある、
FA屋さんが元請けで工作機機械専門の設計屋さんが機械関係の図面を描いた。
きわめて短納期だったのと手計算のNCプログラムでも時間のかからない
内容だったので、データでなく、紙で図面をもらったが、CADで描かれており、
3社ともDXFでやりとり可能だった。

 休日、深夜残業で何とか間に合わせたのだが、部品図と組立図の整合性がなく
かなりの部品は、組立時に作り直しもしくは追加工になった。
短納期で図面屋さんがせかされると、組み立てられない、組み立てても動かない
図面が出ることは、よくある話で、同じことは加工屋にもいえるが、
ミッドレンジのCADでこういう出図されるとは、情報機器としての
CADの意味がないのでは、、、

当時、当社にはフリーソフトか、数万円クラスのCADしかなかったが、
加工部品のデータを読み込み、別レイヤーで加工用のジグを作成するとか
取り付けとか、工具干渉とかのチェックを少ないレイヤーしか持たない
お絵かきCADでやってたので、ゼロが1つ2つ多い価格のCADなら、
こんなことはないと思ってた。

 #若手設計者のつぶやき by WebWheel

を読む限り、2D−CADで部品ばらしは、そう簡単でないようですが、、、

当時、組図をみて部品描くのは、組図に別レイヤーで上書きするのが
もっとも早いようにシロウトの私には見えました。
本職に聞くと部品図は別に描くことが多く、CADだからといって
簡単に干渉やアンマッチが回避出来るものではないようです。

Cad Data LibraryにCAD導入の話が載っている。

見栄でCAD http://www.dtinet.or.jp/~h-suz/cad1.html

いわば、CAD導入のきっかけは、失礼な言い方をすれば、はったりを効かす?
 
実はこのはったりが効いたという同業者がある。
役に立ったのは、関数もマクロも使われてない表計算のシートである。
手書きの見積書を、見栄えのするパソコン作成のものに変えたとたん、
値引き要請がなくなったそうである。
(どうか、同業者の為にも、大企業の方が読まれないことを祈る)
見かけの信頼性が違うのである。

 この事実を聞いてから、小企業におけるパソコン導入の効果は、

1.営業効果
2.3.が技術計算と情報処理

と考えを改めたのである。


1997.9.1.

■零細企業における情報化 その1〜ついにワープロを買えなかった■

 糸井重里さんが、全共闘世代なのでマス目に入った(等幅フォント)の
きちっとした字(いわゆるガリ版字)を書くというのを、
大昔の「広告批評」で読んだことがあります。
 松本清張さんが、かつて新聞広告のレタリングをしていたことも有名です
 あと一人、私の尊敬する人は、元放送局のテロップのデザイナーです。

 私自身、教員時代に学級通信にかぶれ、4ミリ方眼や3.5ミリ方眼を
ロットリングの細い線で埋めていく快感を覚え、フリーハンドで平行線、
垂直線、微妙なコーナーのフィレット、ペジエ曲線?に熱中してました。
 
 そのせいか、尊敬する手塚治虫がいくらCMに出ても、ワープロの
野暮ったい文字は読む気にも書く気にもなれませんでした。
(ワープロは情報機器でなく、清書機械として認知されてました)
企画書などは、ワープロより手書きの方がよっぽど訴求力がありました。
(今はパワーポイントの方が生産性が高いと思います。)
キーボード(鍵盤)は、オルガン、ピアノ、電卓すべて苦手で
(現在も指が単独で動かないドラエもん打法です)ついに触らずじまいでした。
 
 OA機器に憧れながらも、零細企業ではオフコンもワープロも
不要不急の贅沢品でした。
今でこそ、早くワープロを導入していたら合理化でき、今でもその資産が
有効に使えたのにと後悔してます。
ワープロは年賀状作成機で、数百万もする自動プロや、リース料にうっと言う
システムしか提案しなかった機械工具商の責任も大きいと思ってます。

 情報機器と言われながら、その意味は零細企業には伝わってなかったようです。
ワープロは、情報機器だったんですが、部長の手書き原稿を事務員がワープロ入力
するような間違いは、大企業でもあったように思います。
 
 私は、パソコンは情報機器でなく、電子計算機と思ったので、座標計算や見
積もり工数管理の必要に迫られ、自腹で購入してみて、いじくってるうちに
計算機とともに情報機器であることに気がつきました。
 最初は計算機だと思ってましたから、計算結果を事務員が、数年分の
カーボン伝票を印刷していたので、いちいち手書きで写していました。
座標計算を書き写してしては、それをNC機にMDI入力してました。
 安物の熱転写プリンターだったので、書く方が早かったと言う事情もあります。
座標や形状をグラフで確認してたんですが印刷するといつ終わるか
見当もつきませんでした。
 今考えると、画面見れば済むものは、プリントしないというマインドが
ありましたから、この時期もっともペーパレスが進んでいました。

 気がつけば、書き写すこと、またタイムカードなどをみて入力することが
事務員の仕事になってしまいました。あわてて、LANを張り伝票発行の
マクロを作ったり、タイムカードを廃止し3万円で中古パソコンを買って来て
LANにつなぎ、出勤、退出時にEXCELのマクロボタンを
押してもらうようにしたりしました。
(零細企業じゃないとパソコンの前に行列が出来てしまう?)

 パソコン導入の目的は、1.複雑な計算 2.情報を使い回して合理化することと
思ってたのですが、おおきな間違いがありました。
それは、、、、

                         次回に続く


1997.8.25.

■平和のうち物休まずうちて■
 
  最近は減って来ましたが、年輩の方に、鉄工所に勤めていると話したら
旋盤ですか、私も戦争中使いましたよ
と勤労動員の話になってしまうことがよくありました。

 >戦後の発展の理由として、軍事産業に残っていた人材とノウハウが
 >基礎にあったことがあげられるでしょう。
 村上陽一郎氏---日刊工業新聞社の解体新書シリーズ「モノの歴史、技術の歩み編」

 とともに、平和憲法の枠組みのなかで、否応なしに村の鍛冶屋の
3番の歌詞のように、武器は作らずとも、生産手段を作り続け
米英の代わりに懶惰と戦ってきた、町工場の力も大きかったと思います。

 村の鍛冶屋

1.暫時もやまずに槌うつ響   飛び散る火の花はしる湯玉
  鞴の風さへ息をもつがず   仕事に精出す村の鍛冶屋
2.あるじは名高きいつこく老爺 早起早寝の病知らず
  鐵より堅しとほこれる腕に  勝りて堅きは彼がこゝろ
3.刀はうたねど大鎌小鎌    馬鍬に作鍬鋤よ鉈よ
  平和のうち物休まずうちて  日毎に戦ふ懶惰の敵と
4.かせぐにおひつく貧乏なくて 名物鍛冶屋は日々に繁昌
  あたりに類なき仕事のほまれ 槌うつ響にまして高し

「小學唱歌集」大正9年5月15日発行 大鐙閣発行

 4番が実感として少し嘘っぽく響きますが、現代に通じる(大正デモクラシーの影響?)
この歌詞が大好きです。現代の鍛冶屋さんも、4番が実感として
製造業が、繁昌と仕事のほまれを勝ち取るべくがんばりましょう。

 52年目の夏、国内と諸外国の戦没者のご冥福をお祈りします。

   #村の鍛冶屋の歌詞は、上田先生< http://www2.meshnet.or.jp/~t-ueda/ >
    に調べて頂きました
   #村の鍛冶屋のページ< http://www.memenet.or.jp/kinugawa/ >


1997.7.28.

■タタラ製鉄集団の末裔■

今日のコラム1997.7.11にも紹介されている「もののけ姫」を見ました。
、、、余談ですがmononokeはATOKでは”物の怪”と変換されます。

工員の目で見て惹かれるのは、タタラ集団の生き生きと働く姿であり
その中での大きな位置を占める女性達でした。

>タタラ者と呼ばれた製鉄集団の、技術者、労務者、鍛冶、砂鉄採り、炭焼。
>馬借あるいは牛飼いの運送人達。
>彼等は武装もし、工場制手工業ともいえる独自の組織をつくりあげている。
>女達も職人尽しの絵にあるように、より大らかに自由であった。
>人は生き、人は愛し、憎み、働き、死んでいった。人生は曖昧ではなかったのだ。
>荒ぶる神々と人間の戦い −この映画狙い− 原作・脚本・監督  宮崎 駿
> http://toho-group.co.jp/movie/mononoke/moke.htm

「紅の豚」(1992年 原作・脚本・監督宮崎 駿)でも飛行機工場(といっても
町工場)職人の親父と、女達で飛行機が出来る様子が描かれていました。
http://www.bioele.nuee.nagoya-u.ac.jp/~kobata/link2/shumi.html
に画像があります。

当社でも部品が削り終わると、事務所が空になり、女性総出で組立を行います。
町工場では、NC、専用機のチャッキング、ワイヤーカット、
レーザー、切断、ボール盤のみにとどまらず、フライス加工にも女性が
進出しています。人材確保が、難しい零細企業がむしろ進んでいるようです。

確か小関智弘の本に「おんなたちの町工場」という本もありました。
---小関 智弘・技能の世界-はMitutoyoのページの中に
http://www.csk-inet.or.jp/office/mitutoyo/news/report/koseki.html

スタジオジブリの作品は、もう一つの話題アニメと違い、
年齢のストライクゾーンが広く、働く意欲が湧いてくる、タウリン配合のアニメです。
たとえば、「魔女の宅急便」は、技能で行き詰まった時に最高です。
このテーマミュージックを仕事中にBGMで使ってますが、元気が出ます。

「もののけ姫」是非ごらんになって下さい。感想メールお待ちしてます。

スタジオジブリ自身、モノづくり集団として、すばらしい組織です。

スタッフの収入は、普通の勤め人の 約半分という苛酷な状態から
1.スタッフの社員化及び固定給制度の導入。賃金倍増を目指す。
2.新人定期採用とその育成。を進めていく歩み

ディズニーと提携までが「ジブリの歴史と現状」に書かれています。
また、「もののけ姫」が出来るまでの記録がリアルタイムに
***「もののけ姫」制作日誌***に掲載されています。


1997.7.14.

■5Sな悩み■

「生産性を上げるのは簡単ですよ、特に乱雑な工場では」

先日ある集まりで、生産管理が専門の経営コンサルタントの方とお話した時に、
最初におっしゃられた言葉です。

どうも私の勤務先は、生産性の上げやすい前途洋々たる企業のようです。

「整理棚なんか、迂闊に作らないで下さい。
  いらないものが、いるもののじゃまをしてないか、
   置き場が指定席化されているかどうか、、、
    置き場ばっかり作ってもキリがないですよ。」

材料・工具・技能が豊富に転がっている工場内。
油断すると立派な物置場(しばしば、もの探しあるいは、モノ隠し場)が増殖してしまい、
あるはずの穴開け用の”キリがないですよ”状態が起きます。

「整理って捨てることですから、思い切って不良在庫全部捨てて、
  受注時に新たに製作するようにしたら、儲かったところもあります。」

単品加工の切削加工では、機転を利かせてちょっとしたジグや、
形状が役に立つジグとまで言えないオブジェクトを使わないと、仕事になりません。
捨てたらいいような、いびつな形の残材・オシャカ品が役にたったり、
捨てたらいいような工具でも、とっておくと、自作工具のブランクとして
役に立つことも多く、壊れた機械だって、改造して別の用途に使ってみたくなってしま
う。キリコにならない限り、踏ん切りがつかなく、抱え込んでしまうのです。

その点、デジタル化出来るモノはお気楽です。
以前はFDを管理するソフトないですか、とか言ってましたが、
今は、LAN雑整理法と私は呼んでいますが(=超**法?)ハードディスクを
チリチリ言わせておけば、他人のマシンの中まで探してくれます。

言い訳ばっかりしても5Sは進まないので、サーチエンジンかけたのですが
「5S」では、整理整頓がらみは、ひっかかりませんでした。

どなたか5Sの秘伝、ご教授願います。
出来ればWEB上で・・・。


1997.7.10.

■技術教育は情報教育になってしまうのか■

最初に自己紹介で恐縮ですが、私、香川大学教育学部技術学研究室出身です。
(悲しいことに研究室のホームページが今は閉鎖中です。
技術科でなく、技術学研究室というのに誇りを持ってます。
技術科ではホームセンターで売っているものの使い方を教えるようで....)
何年か中学校で技術を教えて、現在は鉄工所勤めです。

以下中学校で技術を教えている先生に送ったメールです。

>世の中、モノづくりを忘れ、情報化、サービス化
>数年前、母校の香川大を訪ねた時、機械系の先生が、
>情報系の学生を抱えて、情報系の先生をしていました。
>時代の流れとはいえ、専門学校じゃあるまいしと思いました。
>中学校の技術の先生が、システム管理者になったり
>授業がHPづくりや電子そろばん塾になり
>生産技術が忘れられると困るなあと思っています。

技術教育と情報教育については現場の先生でも議論が交わされています。

>コンピュータが生活に役立っているのはワープロよりも圧倒的に
>様々な機器に組み込まれるコンピュータであり、ロボットや
>コンピュータ制御の機器により生産される消費財であると思います。
>(上記ハイパーリンクのページより)
という意見は、傾聴に値すると思います。

技術力のある国民を育てる為にがんばっておられる先生のページを2つ   

岡山の教育を語るページ

技術のおもしろ教材集


1997.7.9.

■はじめに■

明日よりこのページで町工場の現場をとりまく
さまざまな話題を掲載していきます。

執筆者は橋本鉄工所  橋本章氏です。
以下に橋本氏の自己紹介を掲載します。

 1957年生まれ
 不器用で、工作嫌い
 鉄工所の親父の長男
 教師、コピーライターにあこがれるが
 頭の悪さ、悪文に恵まれ、夢破れる
 3Kじゃの、サービス化情報化じゃの
 製造業が時代遅れのような風潮の中
 日本の食料は日本の大地でと農業後継を決意する
 農業後継青年の様な決意で
 工業後継青年となり鉄工所入社

 現在、工業後継中年に接近中


橋本鉄工所ホームページにも是非お立ち寄りください。

また、このコラムに対するご意見ご感想をお寄せください。


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